森下エリアで下町文化に親しむ
その時代に生きた人物のファン、あるいは当時にしたためられた小説のファンなど、歴史好きにとって、それらの舞台となった地を巡り、想像を膨らませて歩くのは、楽しいものだ。

中でも、江戸期において文化が庶民にも開かれた性格が強かったこともあってか、東京の下町などには、江戸の風情を色濃く残すスポットも多く、往時の街並みを思い起こさせてくれる。
現在の江東区森下周辺の深川と呼ばれたエリアは興味深い地のひとつだ。いかにも下町然とした雰囲気の中には、文学の薫りもちらほら漂う。

池波の小説『鬼平犯科帳』で主人公となった旗本・長谷川平蔵が生まれたのもこの辺りだそうだが、なんといっても、このエリアで忘れてはならないのが松尾芭蕉だろう。
東北から北陸をめぐって岐阜・大垣までを訪れた一大紀行文『奥の細道』が有名な俳諧師で、1680(延宝8)年から、深川の地に住んでいた。名句「古池や 蛙(かわず)飛び込む 水の音」は、芭蕉の自宅、通称「芭蕉庵」で詠まれたものという。『奥の細道』の冒頭、旅心に駆られて気もそぞろになる描写も、この深川の「芭蕉庵」での出来事。2,400kmにも及ぶ一大紀行の出発点がこの地だったことを思うと、感慨深いものがある。
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